ドブ初陣

tenjinyama2006-03-04

右京の寺にて
軍旗を受け取りに来たドブと左京

「ドブ、戦場で一番大事な事は何かわかるか?」左京がドブに尋ねる
「敵将を討ち取る事?」
「違うな、生きて此処に還る事だ、いくら敵を倒しても最後に死んだら意味がない。」

「そうだわいな、敵討ち取って首切ってる時にやられるなんて話がよくあるんだわいな」
そう語るのは伊東リチ−足利家僧侶、その勇猛は京都に轟く
織田家柴田勝家隊に可児才蔵って武者がいてな・・・・・・」
左京とリチの話
敵を討ち取りその首を切り落としている間に背中から切られたり、五、六人もの首を持って戦うのは不便
かといってせっかく倒した敵の首を放っておいたら誰かに手柄を横取りされてしまうというので倒した敵に
自分が討ち取った証として笹を噛ませておいたという

後に才蔵は関が原の戦いに於いて徳川家康に笹の才蔵として絶賛される事になる
「まあドブが持ちきれない程討ち取るなんて事ないわいなw」
「ゆくぞドブ初陣だ!生きていたならまた会おう」
「ドブ、死ぬなよ」リチが笑った



今回の合戦は終わり
幾人もの武者が若くして散り、老兵はまたも死に場得られず
ある者は笑い、ある者は泣き帰還した

「うぇ、ただいまー」ドブが右京の茶屋にやってくる
「生きて還ったか小僧!!」「おかえりなさい」「おーハナタレ!」皆がドブの生還を祝福する
「左京さん手柄は?」ドブが期待に満ちた顔で尋ねる
「左京殿は一番槍で侍大将昇進だわいな」リチが言った
「ケツの穴のおっさんは?」
「んー・・・・手柄なし、ずっと逃げ回ったり隠れたりしてたからな、だってお前、切られたり殴られたりしたらイテーぞ」そういって飲んだくれている
「オラなんかなーすんごい倒したんだからな!」偉そうなドブ
「お?出世したか!この野郎!」
「それがさーオラが討ち取ったって証にネギ刺しといたんだけど手柄横取りされちまった!」不満気なドブ





「お前が生きて還った事が何よりの手柄だよ・・・・・」そう言ったリチおねえさんの顔は菩薩様のようでした
「飲め、生きてるって味がするぜ」おっさんの言った意味はわからないけど美味かったです
左京さんとリチおねえさんは寺へ行きました、敵味方関係なく死んだ人の供養だそうです。
ケツのおっさんは遊郭へ行きました、合戦が終わったらいつも女の人を抱くのだそうです。
オラは腹が減ったのでネギを買って炭をとりに行きました。
生きてるってのは腹が減るってことだと思いました。








「申し上げます!そ、その、、ケツにネギの刺さった敵兵の亡骸が!」
「首級はすでに持ち去られていますが・・・・凄まじき剛勇!・・雑兵ではありますが、その首級の数!なんと二十!!」
「名乗り出る者がいないなら・・・すでに・・・」
「・・・惜しいな」