恋 第二話

tenjinyama2006-02-16

牢を出され、城へ向かう
ドブは寺へ、トシコは闇に消えた
群集は、まだ笑っている
「やけに人が多いな、何かあるのか?」金箔兜を脱ぎ、うきねに尋ねる
「旅芸人の一座が来ているようですよ」変態スタイルを解いたことで表情が和らぐ
「演目は?」
「・・・悲恋」桃美が答えた
「あー・・・お前ら見てけ、俺は少し寄り道」後ろを向いたまま手を振って去ってゆく世画
「相変わらずおかしな人・・・」
「そうね・・・」


旅芸人の座長−麻生斎
「どちらさまもてきとーにてきとーに〜」
右京、産物商跡地の舞台にて演目「悲恋」のはじまり

主役は若き少年の陰陽師若い女だが男の格好をして演舞している
華麗に舞いながら登場し群集が拍手する
物語の序盤、神社に封印された式符を発見する少年
そこへ左京とドブがやってきた
「左京さん、もう始まっちゃってる!」騒ぐドブ
「うぇwっうぇうぇwっうぇ鬼だせ!鬼w神社ぶっこわせww」
ドブのヤジに観客が失笑し左京、うきね、桃美が赤面する
少年−女が式神を解放する、雪女が登場
だが、何か様子がおかしい
制御しきれていない様子、雪女が吹雪を詠唱した
観衆は演出と思い気づかない
「まずい!」左京が慌てる
「あわてない〜あわてない〜」と座長の麻生斎、孔雀明王法を唱えた
「つめてえ!」大喜びの観衆、拍手が起こる
舞台の脇の陰で男がなにやら印を切ると雪女は少年−女の制御下に置かれた
以後、滞りなく物語りは進行してゆき
悲しい終幕を迎え観衆は拍手喝采
ドブは物語の途中で飽きたらしく、うきねに抱えられて寝ながら笑っていた
「うぇww雪女wうぇw波平ww好き好き」
「変な夢みているんですね」うきねと桃美が笑った
「・・・・」左京は無言
一座の座長、麻生斎がこちらへやってきた
「ほー、そんな年端も行かぬ小僧がよく知っとるのー」麻生斎が言う
「え?この子はずっと寝ていましたよ?波平さん?」
舞台の脇にいた男は、どうやら波平
去ってゆくのが見えた

背中で泣いていた

「聞かせてやろう、波平と雪女の物語」麻生斎が静かに言った


<つづく>