産物商襲撃 第九話 モモミ

「腹へったなー」ドブは途方にくれた
「・・・・・うぇ!俸禄!」寺へ向かう
「ドブ殿、俸禄はさっきネギ買ってたでしょ、あまり欲をかかれるのは仏の道を歩む者として感心しませんな。」本堂僧都に言われてしまった
「ケチくせーなボケじじい、こんな寺滅びろ!伴天連の切支丹とかなんとかにとられちまえ」
一通り悪態をついていると後ろから何やら経文が聞こえた
「うぇ? うぇ?」帰依によって一時的に改心するドブ
「まったく御恥ずかしいところをお見せしてしまいましたな」と本堂僧都は後ろの人物と話している
クスクスと後で小さな笑い声、女だ
「この坊主は妖魔陣で父親を亡くしましてね、もっともその父親も十年帰らずですがね」
「今は左京という男が世話してるんですが、ヤクザな父親のせいか仏門の修行もせずに僧兵なんぞになっちまいまして」
「これがまた生来の阿呆!」
「あーだこーだうだうだ」


「あなたがドブね?」
本堂僧都の苦労を察した女---桃美が言った
「今日は姉のお墓参りに来ました」 姉---彩月桃菜 妹---桃美




十年前・・・妖魔陣

上杉家から世画と左京は妖魔陣に参加していた
妖魔の力は強大で徒党は囲まれた
次々と倒れ妖魔に喰われてゆく兵達
鎧の極みを駆使し護る世画
弓で援護する桃菜
回復する左京
双剣魔の斬撃を受け倒れる世画
仁王立ちで左京が守る

隠れ里巫女の力が巫女の桃菜の脳裏に届く
「・・・いけません、未来が・・・消えてしまいます・・・」隠れ里巫女の声が響く
「げふぅ」左京が血を吐き倒れた、よろよろと起き上がり妖魔を睨む世画
巫女から送られた力が桃菜に宿る
「未来が・・・見えます 元気な男の子」桃菜が言った
小刀を取り出し自らの手首を切る桃菜
血が霧のように噴き出した
「やめろ!」二人が叫んだ
処女の血を触媒、自らの命を犠牲にして神の加護が張られ、周りを囲んでいた妖魔達が断末魔の叫びをあげ消滅した

「これで・・・妖魔も・・手出しできません・・・・」
「約束・・果たせませんでしたね・・龍の・・・涙・・・」
桃菜は世画に龍の涙を渡すと崩れ落ちた
「馬鹿野郎!」
桃菜は微笑んだまま死んだ




クマは力付き、幽霊となり、かつて自分だった者と蘭を見ていた
「蘭殿、先にあの世でお待ちしています」
「・・・・・フッ」自嘲気味に笑った
「拙者は地獄、蘭殿は極楽浄土・・・・か」
数体の幽霊がこちらにむかってくる
「よおクマ!下手打ったな」
「地獄までお供致す」
「にぎやかな旅になりそうだな・・・・」
語り合う幽霊達
「いや、地獄にも見放されたらしい」かつて誰かだった幽霊が言った
ドブと桃菜によく似た女がこちらに向かってきていた


「お姉ちゃん!お化けがいっぱい!」ドブが言った
「さあ転生を!」桃美がドブに言う
ムニャムニャムニャと適当に祈るドブ
ガツーンと桃美の菩薩の錫杖がドブの後頭部を一撃
本日、何度目かの気絶するドブ

「ドブ・・・・それ死人休め・・・・」




<つづく>