産物商襲撃 第五話 黒、麦、風呂

トシコの金玉は縮み上がりケツの穴に緊張が走った、
真砂砂鉄を積んでいるであろう荷車は厳重な警備、
槍を持った警護七人の他に、三人の熟練者と見える者がいた
左手にまさかりの二刀流侍が一人、三日月額当ての僧が一人、小柄で素早そうな鍛冶屋が一人
「麦、黒、風呂」
以前に道場で見かけた三人組
その戦法は凄まじく、縦一直線に並んだ三人による連続攻撃
先頭の僧が放つ光によって相手の目をくらまし
二番手の侍が剣風斬
最後尾の鍛冶屋がぶちかますという連携攻撃
これはほんの一例で攻撃方法は無数にあるという
「ストリーム・・・」と世画が呟いたのを憶えている
変装が見破られたら命はない、、。


荷車が近づくカラカラという音に呼応してトシコの心臓が早鐘をならす
交易の門前まで荷車と徒党はやってきた
「御役目御苦労」
顔を見られない様に俯きながらトシコが門を開けたその時、屋敷街からの十字路をこちらへ曲がり
もの凄い勢いで荷車を引く阿呆がやってきた
「うおおおおおおおおどいてーーーーーー止まんないーーーーー」
「馬鹿野郎!」と罵声が飛び交い警護七人が阿呆と荷車を止めようとするもむなしく
衝突。
衝突による衝撃で警護数人とドブは血を流し倒れていた、黒、風呂、麦は抜刀していた


「いってー   うぇwwあれ?そんな格好でなにしてんのト」
トシコといい終える前に長柄で一撃した、再び気絶するドブ
左京が産物商の前で苦笑いしていた
「貴様、乱破か!」
トシコは倒れている阿呆を呪った
警護を槍でなぎ倒し、地を転がり間合いを取り、慣れた二本の小刀を取り出し黒達に向き直る
黒を先頭に突進してくるのが見えた
「来る!」トシコは目を閉じた、瞼の毛細血管が赤く透けて眩い閃光がわかる
精神を集中する、空気の振動を感じた、剣風斬、、、飛びのいて避けたが勝手の違う鎧のせいで
動きが鈍る、肉が裂け鮮血がほとばしりトシコを更に赤く染めた
手裏剣を三連射、黒の二段目の詠唱中に命中、動きが止まる
「駄目か!クソ!」風呂のぶちかましが迫る
諦めかけたその時、眼前に大男が仁王立ちする
ぞの恵まれた体躯でぶちかましを受け止める左京、体中の骨が軋み内臓が悲鳴を上げる
「げふぅ」と口から血を吐き出す、風呂の頭が赤く染まる
左京はぶちかましを受け止めたまま風呂を抱え上げる、高く、より高く
二人分の体重を後方へ預ける、空が見えた、月が綺麗だった
頭から垂直に風呂を地面へ叩きつける
仰向けに転がる左京、月が見えた、
目の前が暗くなる、
月が見えなくなった


左京と風呂が倒れた、産物商の奥から、右京の両替方面からも警護隊長と警護が数十人やってくる
産物商の中で霊的な光が発光し外壁の隙間や木材の節穴から光が漏れる
次の瞬間、屋根を突き破り耳をつんざく咆哮と共に巨大な鬼が現れる
幾人かは召喚の際に破壊された屋根から落下する瓦の下敷きに
手に持った金棒で二、三人まとめてなぎ倒す
かなりの人数は鬼を見て逃げ出していた
鬼を操る波平の廻りは結界により落下する瓦礫から護られた
麦は怯む事なく鬼に対して切りつける、鬼は麦を睨み怪光線を発射する


トシコと黒は互いに消耗していた
黒が詠唱を始める、トシコは最後の手裏剣を構える
紅蓮の炎と十字手裏剣が同時に発射される
燃えさかる炎の塊を手裏剣が貫く
「乱破、名は?」胸に手裏剣が突き刺さった黒が言った
「高橋トシ」全身を焼かれ忍は名乗った
二人同時に倒れた


先に鬼が倒れた
幾度となく繰り返された連撃、その矛先は波平に向かう
波平は精神を統一し術を唱える
光芒が麦を襲う、かまわず切りつける麦
波平を護る結界が破壊される
暴れまわった鬼による破壊が限界に達し、産物商が倒壊した
武人と術士は互いにその誇りを捨てず戦いを止めない
見合わせた二人はニヤリとし瓦礫に飲み込まれた




「うぇ?」ドブが目を覚ました
「なんじゃこりゃあ!」見渡すドブ、すべては自分が原因で起きたとは露ほども思っていない
あたりに転がる男達、倒壊した産物商、交易、残っているのは産物と交易の二つの蔵だけ
「これじゃメシくえねーじゃねーか」
麻袋に詰め込んだ赤目砂鉄にうわべだけ真砂砂鉄、ドブの砂鉄丼大作戦大失敗
「オラの荷車、、、うぇ?2つある??」
「中身は、、、」麻袋を開けて中を覗くドブ
「うん、砂鉄はいってる、これだ」
「あっちのはなんだ?まあいいか」
「あしたもネギ〜〜〜♪」


荷車の間違いに気づくはずも無く阿呆は帰っていった



<つづく>