産物商襲撃 第四話テンコ ドブ

鍛冶屋は産物商の左の蔵に身を潜めた
矢切の格子から月明かりが僅かに射し込む、照らされて奥の棚で何かが煌めいた
雑穀わらの山をかきわけそこへ進んだ
「ジェイド!」
鍛冶屋は格子から覗く満月に翡翠をかざし、眩く輝くそれを見つめた
「インペリアルジェイド!!」
翡翠における最高品質、透明度が高くクロムによって強い翠色の美しい色彩を放つ
言葉にならず、ため息がでた
心臓が高鳴った
翡翠にキスして鍛冶屋はそれを懐にしまった。


蔵には希少度の低い産物、樺の枝、赤目砂鉄、楮などが大量に保管されていた
だが、それらは持ち運ぶには不便だった
その点でヒスイは価値、大きさ、重量が盗み出すには最適だった。
計三十個ほどの翡翠を手に入れる
先ほどの翡翠ほどではないにしろ十分すぎる品質のものばかり揃っていた

鍛冶屋は考えた、京都でもっとも警備が強力な場所に保管されていた翡翠
おそらく将軍家へと献上されるものであろう事
真砂砂鉄が大量に取引される事----クマが子荻から聞き出した情報
警備が何時にも増して強力だった事----砂鉄では無く翡翠
高度に改良された鉱山----真砂砂鉄----翡翠
子荻の知行地−−−−−鉱山!!
萩原子荻−−−稀代の策士
「逃げろ!」
祖国で強盗団をしていた経験が、本能が、そう告げていた




ドブは途方に暮れていた
「腹減った、、、、ここんとこネギしか食ってない、、、」
「玄米、、、、、くいてーーーー」
「んーそんな贅沢じゃなくてもいい、麦めしに上のほうだけ玄米のっけて玄米丼」
「うぇwっうぇwっうぇ、、、、腹減った、、、、」
「明日、産物商に赤目砂鉄売って玄米丼食おう、、。」
ドブも人並みに知行地を持っていた、しかし駄目な性格が災いして
大火災をおこし隣の他人の工房まで炎上、その工房は改良終了間近だったという
治水を怠り暴風雨で洪水、
あろうことか野武士襲来の際には村役、村人を放置して我先にと逃げ出した始末
当然の如く、改良は進まず彼の知行地は赤目砂鉄しか発掘できなかった
「・・・・・うぇw」
どうやら彼の未熟な知能が名案を思いついたようだ
「たしか左京さんちに真砂砂鉄あったな、、、うぇっうぇw」
赤目砂鉄を入れた麻袋を大量に荷車に積み込むドブ
「メシ丼、うな丼、砂鉄丼〜♪」
「うなぎじゃないよ〜砂鉄だよ〜♪」

ドブは馬鹿な歌を歌いながら荷車を引き左京の家に向かった