産物商襲撃 第二話ランコ

今日は産物商の警護の当番です
なんでも、山城の知行地で真砂砂鉄がたくさんとれて今日納入されるらしいですよ
あ、ワタシの知行地の牧場では鳥さんとネズミさんとキツネさんが仲良く暮らしています
先日、ネズミさんに子供が生まれたので「はむ太郎」と名づけました
とっとこ走ってとってもかわいいの♪
そろそろ真砂砂鉄を積んだ荷駄が届くころです
何事も無く警護が終わりそうで安心です
あら?あそこにクマちゃんがいる!
「おおランコ殿!月の綺麗な夜ですな」
「南蛮の酒で乾杯致そう」
クマちゃんが持ってるのは、、、、お酒、、、、。
「お酒、、欲しい、、でも警備が、、」


クマーは当日になって自信を喪失していた
巧く酒で彼女が釣れればよいのだが、真面目な彼女が警備を放り出す可能性は低いと彼の冷静な頭脳は判断していた、そしていざとなれば彼女を殺める覚悟もなければいけないという事も理解していた、だが彼の優しさがそれを拒絶し、彼の心は葛藤する。
「たのむ、来てくれ!でないと君を」
君を、、、殺さなければいけなく、、殺さなければ、、殺さな、、殺す、殺せ!
忍者としての冷酷が彼の脳を支配する


「でないと私を?奪い去ってくれるの?」
名家の出身であり、その美貌の為に彼女には家の決めた見合い話などが幾度となく申し込まれた、その都度彼女は破談させた
家老の小倅との縁談も、堺の豪商との話も、ただただ
下賎の忍者一人の為に
  

コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ
幼少の頃より、その体に頭に刻み込まれし暗殺術
コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ
呪詛は止まない
酒瓶を放した、小刀を握った、手のひらに汗が滲んだ、
ランコの鎧の継ぎ目へ、最短距離を最速で小刀が一閃する

「奪い去ってくれるの?」
彼女の笑顔が脳裏に焼きつく
何年も忘れていた涙が頬を伝う



京の都有数の名家である姉小路家は娘の深夜の警護に当然の如く見張りをつけていた
本人には知らせることなく
クマーとランコのやり取りに姿を現す、その数、十人
無数の手裏剣が一斉にクマーに向けて射撃される
「忍法空蝉」静かに囁いた
手裏剣をかわし、次の瞬間には十人の忍者が絶命していた
両手で蘭を抱き京都の闇へ消えるクマ

「奪い去ってくれるの?」
呪詛は止んでいた
「奪い去ってくれるの?」
代わりに蘭の声が聞こえた

<つづく>