まだ思う

人と触れ合う仕事

感謝される仕事

キレイ事


ケツ拭いて「ありがとう」
もうすぐ死ぬ「ありがとう」



上棟式や新築祝いの施主の言葉
「大工さん、いい仕事して頂いてありがとう御座います」
これからの人生の「ありがとう」




何年も前に建てた家の、90過ぎのばーさんから年末に荒巻シャケが届く
そのばーさんの言葉
「死ぬときは、大工さんに建ててもらったこの家で死にたい」



徘徊するばーさんの言葉
「今、家に帰るとこ」
毎日聞く言葉
「おにーちゃん、アタシ家につれてっとくれ」



俺には残酷すぎる

思う

俺がボケたら無理に生かさず殺してくれ


ボケなくても両手マヒとかなったら殺してくれ

クソまみれになってまで生きたくねーよ

食事何割摂取だの水分どんだけ摂取だの他人に管理されたくない

おかゆにキザミのメシなんか食いたくない

何日クソしてないからと下剤盛られたくない

ケツ拭きが半年以上経過した

初めは「おじいちゃん、おばあちゃん可愛い」ってのが本気で理解できなかった

でも、そこはすぐに理解できるようになった

ジジババは可愛い

彼らの言動は、たまに泣きそうになる



あるバァちゃんの食事介助をしていて毎日思う

口を開かないのは

死にたいって意思表示なのでは?と

喋れないから

抵抗するのはそこしかないから?


介護やってすぐの頃に、同僚というか上司というかに

そんな事を聞いてしまったりした

最近、また聞いてしまった

たぶん答えなんか無いんだと思う



だから俺がボケたら殺してくれ

あああああ

年末に仲間の大工が首吊った


1月2日介護の同僚と休み時間が同じだった
僕は普段は施設でメシを食っているがその日は家族が家にいることもあって家に帰ってメシを食った
「ひさしぶりに○○さんと休み時間同じだったけどメシ食えなくて残念だなー」
と笑って彼は言った
その日の帰り、彼はジャグラーで少し出たからと景品で取ったコーヒーをくれた
「でもパチンコなんかしないほうがいいですよねー」
と笑って言っていた
その後、彼は無断欠勤
僕は心配で彼の家に行った
彼の名誉の為にここでは書けないが色々と話し
彼は、自ら施設に電話して明日からまた働きたいと伝え
僕は安心して家に帰った
翌朝、彼は来なかった
僕は心配で仕事を放りだして彼の家に向かった
呼び鈴を鳴らすが出てこない
最悪の事態が脳裏をよぎったが
携帯が鳴り
「帰ってくれ」
と彼は告げた
僕は玄関で泣きくずれ
しばらくして彼はドアを開ける



僕は無力だ



放っておけば死んでしまう仲間を助けられない


彼も僕も途中採用で、あと数人途中採用がいる
30代の途中採用は僕と彼ともう一人
彼は、先日もう一人の途中採用の仲間をカラオケに誘い一緒にメシを食ってきたらしい



彼は猫を飼っていて
猫は子猫なのにすごく太っている
エサは数日分はあろうかという山盛り
自分が吊っても猫だけはということなのか



僕は無力



言い方は悪いが、こんな事言って本当に申し訳ないが
30代の未来ある男を見捨て
老い先短いジジイババァのケツを拭く


もちろんジジババだから放っておいていいなどとは思わない
僕の給料は、
特別養護老人ホームの利用料から支払われている
特別養護老人ホーム利用者の利用料は
年金と税金で支払われている

その!年金も!税金も!


支払っているのは僕たち若者



彼を助けたくても
僕は無力



わからねーんだよ
何のために働いてるのか